三日間、金沢・福井を旅してました。帰ってきてぐったり。明日から仕事だと思うともっとぐったり。




「地球発の船は、その惑星に到着した。その星では船がゆるやかに川を下り、すべての岸には悲劇と喜劇が溢れていた。消毒液の臭いのせいでとまらない涙、ため息を吐くのはモラモラの群れ、一つの部屋に四つの家族、即決裁判と労働監獄、舌を青くした市長、石炭屑の少女、強制労働の少年。男がいた。女がいた。子供がいた。老人がいた。船は今日も黒い川を下り、明日も下り続ける。その先にあるのは……日本ファンタジーノベル大賞受賞作家が描く、人間たちの普遍的な生の営み。 」




旅行中に読んでた本。



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生きてるよ

本当は読んだ本の感想をたくさん書きたいけど、相変わらず続かないね。卑猥な書き込みが並ぶのがいやなので、ここいらで読んだ本を一気に列挙。


どの短編も意外性に満ちていて面白い。もうすぐ続編が出るそうで、そちらも楽しみ。


タイトル通り、物語全編を通して質問→回答の繰り返し。その徹底ぶりは素晴らしいんけだど、「質問している人間は誰なのか?」という謎の答えがもっと奇抜なものだったらよりよかった。途中であっさりと明らかになって、しかもその内容がこちらの想定内だからなあ。


城山三郎半村良吉村昭など、普通だったらまず読まないような作家たちの短編がずらりと。
死体の一人称の小説というのは前例があったんですか。


法廷物の戯曲。
真相から結末に至る流れが鮮やか。もっとクリスティ読もう。


何年か読書を続けてわかってきたことは、二者の視点から語られるミステリは大抵○○トリックが使われているということです。


こ、こうきゅうがすごいことに……!


か、かひりんとこさんじょうが……!


小説内のキャラクターが死んだだけなのに、なんだろうこの喪失感。


物語は新しい次元に入ってしまった。ここからは様々な集団の思惑が絡み合って一層入り組んだ展開になりそうです。


ゲームブック
15回くらい死んだ。一応考えれば分かるようにできていないこともないかもしれない。


内田樹は、我々の身近な問題に対して、新しくて鋭い視点を分かりやすい文章で提供してくれる。だからついつい読んじゃう。
「手元にリセットボタンを握りしめて結婚生活をしている人間は、まさにリセット可能であるがゆえに、その可能性を試してみたいという無意識の欲望を自制することができない」


もっと詳しく説明してほしい!と物足りなく思う項目もあるけれど、ガイド的な書だから贅沢言っちゃいけませんよね。
自由主義と民主主義の違いがよく分かった。この本読まなくてもそれくらい知っとけよ、という話ですが。


著者がインタビューで「5人の読者がいるとして、全員が80点をつけるような作品よりも、4人は0点をつけて残りの一人が100点満点をつけてくれるような作品が書きたい」というような発言があったんだけど、この小説は全員が80点をつける小説じゃないかなあ。


ラスト一文に趣向を凝らした連作短編集。
一作目はゾクッとする。二作目は深い余韻を残す。三作目は脱力。四作目は既読済みだから今回は飛ばす。五作目はそういう仕掛けはなかった。
米澤穂信ももっと読もう。




どうしたってあの超超大作である「水滸伝」と比べると見劣りするのは否めないよなあ、なんて我がままを言いながら読みつつ、読了後は胸一杯で続編を読む気満々なのである。


2007年の作品で、著者は1930年生まれ。77歳にしてこんなみずみずしい作品を書けるというのが信じられません。
第二次世界大戦終戦前後が舞台。日々荒廃していく日本の中に、ミッションスクール、女学生、女子が女子を慕う関係、交換日記、海外文学、西洋美術といった要素が一層の神秘性を解き放っている。
鏡の仕掛けは、正直よく分からなかった……。手元にある手鏡二枚をいじってみたけど、どうやれば小説の通りになるの?


生きづらい今の社会に生きる僕たちみたいに平凡な人間でも、明るい未来が見えない閉塞した毎日でも、ドラマのように輝ける瞬間がある。本を読んで希望が得られたのは久々かもしれない(そういう本を選んでないし、そういう効果を求めてないから)。著者の信念を見た気がした。

舞台は、急成長の途上にある宗教団体“人類協会”の聖地、神倉。大学に顔を見せない部長を案じて、推理小説研究会の後輩アリスは江神二郎の下宿を訪れる。室内には神倉へ向かったと思しき痕跡。様子を見に行こうと考えたアリスにマリアが、そして就職活動中の望月、織田も同調、四人はレンタカーを駆って木曾路をひた走る。“城”と呼ばれる総本部で江神の安否は確認したものの、思いがけず殺人事件に直面。外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は決死の脱出と真相究明を試みるが、その間にも事件は続発し…。江神シリーズ待望の書き下ろし第四長編。





くろーずどさーくる!
れんぞくさつじん!
じゅうすうねんまえのなぞのみっしつさつじん!
たんてい!
はんにんはあなただ!



一見関連のなさそうな様々の要素が最後の謎解きで一本の線につながる。この快感はやっぱりたまらない。ミステリーは面白いと再確認。良作には出会うけど傑作にはなかなか出会えなかった2009年において、この小説が現時点でのナンバーワン。
宗教団体は現代のミステリーにおいてよく使われてるけど、やっぱりやりやすいんだろうなあ。神聖な場所だから入ってはいけない聖堂とか、殺人が起こった後教団がなぜか主人公たちを施設内に閉じ込めることでクローズドサークルが成立したりとか、物語がうまく回ってる。
そして何より、シリーズ物である関係で小説の舞台がいまだに1989年なのが都合いいですね。だってこんなの、現代だったら携帯電話を使えば一発ですから。

ツタヤにふらっと立ち寄って、久々にCDでも借りようかと思ったのだけど、ここ1年の新曲が全く分からない。就職してから音楽番組をぱたりと見なくなったので、どういうアーティストのどういう曲が発売されたのかを知らないので、半ば異邦人のような気持で売り場をうろうろ、あたふたする。で、結局過去に聞いていた好きなアーティストのまだ聞いていないアルバムを求めることになるんだけど、それも進歩ないよな。大げさな言い方をすると、新しい世界に進めず、過去に留まったまま自分が更新されていかない感じがする。
結局今回は数年前に出たラブ・サイケデリコのベストアルバムを借りる。ラストスマイルを7年ぶりくらいに聞いた。懐かしい。だけど懐かしさばかりに浸っていたくない。
新しく好きなアーティスト探さないと。ヒップホップの香りがするロックバンドいないかな。
あるいは銀杏BOYZマキシマムザホルモンが早いとこ新曲を出してくれないか。飢えてるんだ。


「雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう―。第31回メフィスト賞受賞作」





長い!
多分これ読んだ人の八割はこう思ったんじゃないかなあ。ちょっと冗長に過ぎる感があった。ましてや舞台は学校の中だけに限定されているからなおさらつらい。無駄な場面や説明的すぎる説明はいくらでも省いてほしかった。あるいは登場人物を二人くらい減らすとかね。
それでも、この小説は好きだ。くどいくらいに詳しく語られる一人一人の生い立ちやエピソード、それらがどれも「思春期の自意識」好きにはたまらなかった。自分という人間について、家族や友人との人間関係、そういった悩みがリアルに描かれていて、読み終わった後も登場人物の一人一人の横顔が鮮やかに立ちあがってくる。登場人物同士の掛け合いはうまくないけど、内面描写は的確で立体的。
これが著者のデビュー作。荒削りで未完成だけど、書きたいものに対する強い意志を感じる。だけど、まだ技術が思いについていってない。願わくば長さを2/3に縮めてくれればもっとよかったなあ。




「問題なのは、彼が景子を理解していなかったことと、血の通った景子の言葉を受け止めるどころか拒絶したことだった。理想化した景子が全てで、そこから先を彼は理解したいとさえ思っていなかった。むしろそれは彼にとって見苦しい景子の醜態だったに過ぎない」

人によってとらえ方が違うのがまた困るよね

友人に自作の小説を読んで感想をもらったんだけど、その内容が自分の思っていたことと正反対で驚いた。
氏曰く、「中盤以降はテンポが良くて面白かったけれど、序盤が読みづらく、余計な文章が多い」
ところが僕は、「序盤は描写が丁寧だけど、話が進んでいくに連れて徐々に描写が不足している」と思っていたのでさあたいへん。
今まで情景描写が足りないとよく指摘されていたから序盤は多めに入れたのに、中盤以降その意識が薄れてしまったことを反省していたのに、全く逆のことを言われてしまった。どう考えればいいんだろう。