「雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう―。第31回メフィスト賞受賞作」





長い!
多分これ読んだ人の八割はこう思ったんじゃないかなあ。ちょっと冗長に過ぎる感があった。ましてや舞台は学校の中だけに限定されているからなおさらつらい。無駄な場面や説明的すぎる説明はいくらでも省いてほしかった。あるいは登場人物を二人くらい減らすとかね。
それでも、この小説は好きだ。くどいくらいに詳しく語られる一人一人の生い立ちやエピソード、それらがどれも「思春期の自意識」好きにはたまらなかった。自分という人間について、家族や友人との人間関係、そういった悩みがリアルに描かれていて、読み終わった後も登場人物の一人一人の横顔が鮮やかに立ちあがってくる。登場人物同士の掛け合いはうまくないけど、内面描写は的確で立体的。
これが著者のデビュー作。荒削りで未完成だけど、書きたいものに対する強い意志を感じる。だけど、まだ技術が思いについていってない。願わくば長さを2/3に縮めてくれればもっとよかったなあ。




「問題なのは、彼が景子を理解していなかったことと、血の通った景子の言葉を受け止めるどころか拒絶したことだった。理想化した景子が全てで、そこから先を彼は理解したいとさえ思っていなかった。むしろそれは彼にとって見苦しい景子の醜態だったに過ぎない」