10冊目

「「気にしないで」バビおばさんは言った。「だれにでも弱みはあるものよ」」
「しかし見せびらかすことができないなら、権力を手に入れてなんになる?」


チョコレート・アンダーグラウンド

チョコレート・アンダーグラウンド



大人たちが選挙を怠けている隙に政権を握った「健全健康党」は、チョコレートを始めとした甘い食べ物を健康を害するという理由で厳しく禁止する。体に害のあるものを排して、体にいいものだけを摂取し、健全に健康に生きましょうと主張する。隠れてチョコレートを食べると逮捕されて強制収容所へ監禁され、チョコレートが嫌いになるよう洗脳される。こうして健全健康党は正義を振りかざして人々を抑圧する。生きづらい社会になってしまうが、選挙の結果選ばれた政党だから強く文句も言えない。
ハントリーとスマッジャーという二人の子供が、チョコレートを食べられる自由な国を取り戻すために、チョコレートの密売を始め、仲間とともに党を倒して目的を遂げる。
ここまではいいんです。展開に不満が少しあるけれど、面白いし、自由や民主主義や権力についていろいろ考えさせられるんです。
問題はここから。
チョコレート撲滅運動の先頭に立って働く捜査官がいる。彼はハントリーたちとの戦いに敗れ、拘留される。国民はちょっとした仕返しのつもりで、監房に彼の嫌いなチョコレートを送りつける。捜査官は最初は拒絶するものの、少しずつ口にするようになり、やがてチョコレートが大好きになる。そして、国民は「捜査官は指導が実り、もう社会に復帰させても安全だということを」知る。やがて彼は菓子店を経営し、結婚して子供を産み、幸せになる。
これは作者のやりすぎでしょー?
本当に自由な社会なんだったら、旧来の価値観を抱き続けることも許してやれよ。作中の国民たちがチョコレートの差し入れという嫌がらせをするのは別にいいんだけど、捜査官をチョコ好きにさせて菓子店を開かせるのは行き過ぎじゃないか。これじゃあ「チョコレートを食べて幸せになろう」という思想も、自由の象徴じゃなくて、「チョコレートを好きにならなければいけない」という抑圧になっちゃう。甘いものを禁止する健全健康党と同じじゃん。



ちなみに、映画の試写会を観てきました。アクションシーンが満載になっていたのにびっくり。派手になってて楽しかった。主人公たちと行動するのがバズおばさんじゃなくて彼女の(孫?)娘になっていて、ブレイズが若者になっていたのが残念。老人たちの恋愛要素が好きだったのに。
何よりも、健全健康党の歌がちゃんと歌になっていたのに感激。ここだけもう何回か観たいなあ。


余談だけど、チョコレートプラネットの坊主の人が「松尾アンダーグラウンド」という芸名なのは、単なる偶然?





★★☆