興奮 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-1))

興奮 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-1))


競馬好きだから競馬ミステリで有名な作家の作品を読んだ。
競馬がどうとかじゃなくて小説として頗る面白かった。
ハードボイルドあまり読んだことないけど、実は好きかもしれない。恥辱に耐えて目標に向けて着実にまっすぐに突き進んでいく男の姿に惚れるわ。自分が軟弱なだけ余計に。


とにかく今の内に、積読されてる古典長編を読んでしまおうと思って。カラマーゾフに続き、罪と罰を手に取る。過去二度挫折していて、三度目の正直を叶えました。(読み終えたのは数日前ですが)
主人公の思考体系がさっぱり分からず、読むのがたいへんだった。「不意に」という単語が頻発。自分の過去を滔々とまくしたてるかと思えば、「不意に」続きを喋る気をなくしたり、家に引きこもっているかと思えば、「不意に」外を歩き回る気になったり。体の中にエネルギーが溜まっていて、でも上手く使えず、自分でも予期できない形で表面に現れたり消えたりするのだろうか、ととりあえず仮定した。
厄介な主人公に対して、それを取り巻く友人たちは非常に優しい。特にソーニャ。知り合って数日の男が自分の罪を告白したのに対して、「一緒に流刑地に行こう!」だもんなあ。どんだけ自己犠牲精神に溢れた奴やねん。その辺りの下りで感動した。
限られた非凡人が何かを犠牲にしながら民衆を引っ張るのではなく、凡人一人一人がソーニャのような温かい心でもって人々と接することで世界を変えていく。理想的なんだろうけど、極めて難しい。ドストエフスキーの作品は二作読んだけど、その民衆を愚かな存在として描いているように感じるのです。


ドストエフスキーではあと白痴が残ってる。だけどちょっと疲れたので、ひとまずは気を張らずに読めるエンタメ小説を手にとっているわけです。古典長編は、次は虚無への供物を読むつもり。あまり古典じゃないけどね。日本三大奇書を全部読もうかなと。「ドグラ・マグラ」は昨秋読んだし。